ミニアチュール
「これは小さくてハンカチしか干せないけど」と言いながら、傘を差した女の子の後姿と、雨のしずくの刺繍のハンカチを干します。「ほら、これなんかチョコレートとミントのマーブルカラー」
姉さまがお洗濯をすると、どんなにからりとした晴れでも連日でも、干し終わった途端必ず雨が降るのです。今日はキツネの嫁入りです。
多々良を踏んで
硝子の洗濯バサミは開発中でした。落としても割れなくて、軽くするため中をくりぬいた形に。それにドワーフ達は見た目が良いものでなければ、自分達が作る意味がないと考えていました。だから、思い切り丹精したものしか出来上がらないのです。今回は、ドワーフの蟻のような住家から、綿帽子のお家に行くための、硝子の種も、包みに紛れ込んでいました。
画竜点睛を欠く
その種は地面を突き破って伸びていきました。ガラスのような透明の根は中が空洞で、降りていけるのです。ななめに伸びた根をつるつるすべって行きます。水脈の中を突っ切ったところではしばらくしがみついて、流れを眺めていました。
光が届かないからきらめくはずがないですって? そんなお利口さんはこんな話をほんとうにしないのです。
「水族館で、お魚が水槽の外を見たらこんなかしら」と綿帽子。
「水槽の外には水は見えないと思うよ」と薄縹(うすはなだ)。
「ならこれは、水族館のお魚抜きね」
「もしかしたら彼らの目には空気が見えるのかもしれない」