小自然サバイバル

その辺の枯草と枯れ枝をかき集めてあっという間に火を熾しています。
「人体自然発火ができるの?」
「火打石とマグネシウムを持っているから。不自然発火だね」と秘色色(ひそくいろ)は澄ましていいます。
ぱちぱちいう火を眺めていると、水着は乾く替わりにテンガロンハットとウェスタンブーツ、ホットパンツにガーターと編みタイツ、刺繍のチュニックブラウスに替わっていました。

人間は犬や猫より帰巣本能が強い

「どうしたら帰れるの」と綿帽子。
「さあ」とピジョンブルー
「そんな、また靴を裏返しに履けばいいんでしょう? でもこのブーツは確かに裏返せないわ」
「大層な紆余曲折を経てやっと帰り着くのは誰かに任せて、ロケットが開発されるのを待とう」
「この原生林で、そんなものが開発されるのはいつになるの。自力で作るとしたら、この木を使うことになるわね」

藻類共生種の白熊

薄緑の熊が出てきました。
「『お嬢さん、お逃げなさい』っていうかしら。白い貝殻のではないけど、白いパールのイヤリングをしているから。でもちょうどよく落ちるかしら」と綿帽子はわくわくしながら見つめました。
「この熊に乗るといいです。たぶん、乗せてくれるでしょう」と淡藤色(あわふじいろ)がいいます。
すると熊はにっこりしました。すくなくとも綿帽子にはそう見えました。
「いい熊みたいだけど、どこに行っちゃうかわからないじゃない」
「たぶん彼が地球行き宇宙号です。陸(おか)住まいだから、大西洋の真ん中に降りたりはしないでしょう」

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